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【マリアが亡くなる3日前】
猫の抗生物質の注射
今日は3時半にマリアの面会に行くことになっていた。
他の猫達はアンズを除いて、大分回復してきた。
マリアの昨日の顔を想い出すと、とても怖くて一人で行けず、
お父さんは仕事だと言うし、隣の嫁さんにいっしょに行ってもらうことにした。
一人で行くと、待合室で暗く落ち込んでしまう。
孫もいっしょについてきた。
うるさいけれど、ちょっと心強い。
マリアの顔はやはり昨日と同じ
とても回復しているとは思えない
嫁さんもマリアの顔を見て、びっくりしていた。
「マリア! マリア!」と呼んでも、わかってはいるのだろうが
無表情だった。
昨日夜の血液検査の結果もそれほど回復している結果ではなかった。
しかし、先生は
「2週間効果のある抗生物質を注射しているので、他の抗生物質を試せない。
2週間たった土曜日を過ぎたら、他の抗生物質を与えてみましょう。」
と言う。
「土曜日まで(マリアの体は)持ちますか?」と聞くと
「持ちます!」とはっきり言った。
このような状態で連れて帰るより、
「強制給餌とビタミン剤の点滴をしっかりしたいし、ここに置いておけば、体力の消耗も少ないので…」と、言われ、このまま入院の状態にしておくことにした。
この男の先生は、2週間効果のある抗生物質の注射は最初からしない先生だ。
最初は、何種類かある錠剤の抗生物質を試して、効かなければ変えて猫に飲ませていく。
ところが、二人ぐらいいる内の一人の女の先生は、最初から、この抗生物質の注射をしてしまう。
この抗生物質の注射は、猫に薬を飲ませづらかったり、飲ませるのを忘れてしまうような人には便利かもしれない。
しかし、この抗生物質の注射が効かなかった場合、2週間待たないと、他の抗生物質を与えられないので、非常に困る。
抗生物質にもいろいろあって、効果を発揮する菌が違うらしい。
この抗生物質の注射の価格は、1回4,400円。1回すれば2週間何もしなくていい。
錠剤の抗生物質の値段は、1錠80円の計算で、一日2回飲むとして、80円×2回×14日。
2週間で2,240円。
病院にとっては、注射の方が、もうかるからこの注射をしてしまうのでしょうか。
たしかに、猫に薬を飲ませるのが大変な人には便利な注射かもしれないが…
同じ抗生物質の注射をしたミントは回復したので、この注射が今回の菌に効かないことはないのかもしれない。
何をしてもマリアにはダメだったかもしれないが、治療方法にも後悔が残ってしまった。
注射ではなく、錠剤の抗生物質にしてほしかった。
今度から、他の猫達には、2週間効果の続くという抗生物質の注射はお断りだ。
マリアは帰りたかったかもしれない。
毎日、点滴と注射と強制給餌。
でも、先生の言葉を信じて、生きて欲しかったから、置いてきてしまった。
そして、生きているマリアを見たのは、この時が最後となってしまった。